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カラスとの攻防
 

  東京都では、カラスが増えて困るので駆除を始めたというニュースを最近よく聞きます。

 私の学校でも、就任して間のない5月のはじめに「休み時間に子どもがうんてい(遊具)の近くで遊んでいるとカラスが襲ってくるので何とかしてほしい。」という3年生の担任からの訴えがありました。教頭と技術員にカラスのことを伝え、3人で観察することにしました。

 翌日、2人の子どもがうんていの上に座っていました。うんていのそばの大きなクスノキのこずえから黒いものが飛び立ったのが見えました。それが2人の子どもから少し離れたところに止まりました。しばらくすると、子どもに少しずつ近寄っていき、羽を広げたりくちばしでつつくまねをしたりして子どもにそこを退けといわんばかりに威嚇しています。

 子どもが校庭からいなくなってから、クスノキを調べに行きました。こずえから時々カラスが飛び立っています。クスノキの真下に行って上をすかしてよく見ると、カラスの巣らしきものが上の方にわずかに見えます。その間、カラスは校舎の屋上につがいでとまり、私たちの様子を見守っていました。

 私たちは長い棒で巣をつつき落とそうとしましたが、なかなか棒が届きません。脚立の上に乗って棒でつつきだしたとき、夫婦のカラスがいきなり私たちを襲ってきました。危険を感じたのでその日は巣の撤去をあきらめました。次の日からは、カラスから私たちが常に見張られました。公用で校外に出たときでも、電車に乗るまで上空からカラスがついてきました。雛が巣立てばカラスも居なくなるだろうということで、児童にはしばらくクスノキのそばには近づかないように指導し、その年の巣の撤去はあきらめました。

 6月の末には雛も巣立ったのか、カラスも見えなくなりました。その年の冬に校内の大きな樹木のせん定を業者に徹底的にやってもらいました。これでカラスが巣を作るところはなくなっただろうと安心していました。

 翌年、5月になりました。学校の近くの方から、「下校時に1,2年生がカラスに襲われている。」という電話を頂きました。技術員とよく調べると、児童通用門の近くのヒマラヤシーダーの中からカラスの巣を見つけました。学校だけでは対応しきれないので、いろいろ調べてカラスの巣を撤去してくれる業者をさがしました。撤去費用の見積もりに来てくれたとき、業者と私の様子をカラスがずっと観察していました。

 巣の撤去の日、ヘルメットをかぶり、厚手の服を着て観察にいきました。業者の方からは、「作業中はカラスを常に視野に入れて、絶対に背中をカラスに見せないように」という指導を受けました。作業が始まると、夫婦のカラスが私たちをめがけて低空飛行で襲ってきました。しばらくすると、木の上から「巣を落としますよ。」という声とともに、ドサッと直径40センチほどのカラスの巣が落ちてきました。中にはまるまると太った雛が4羽いました。雛は業者に引き取ってもらいましたが、親鳥はしばらくはその木から離れませんでした。しかし、子どもへの襲撃はなくなりました。

 次の年も図書室の隣にあるヒマラヤシーダーに巣をかけました。二階の窓から技術員と2人で棒でつつき落としました。その間、二羽の親鳥から猛烈な攻撃を受けました。巣にはまだ卵は産まれていませんでした。その後、校庭にカラスが巣作りをしたという話しは聞いていません。カラスもあきらめたのでしょうか。 

○ ワンポイント・アドバイス
 
「手塩にかけて子どもを育てる。」という言葉がありますが、カラスは文字通り命をかけて子どもを育てていることがよく分かりました。

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